EVユーザーインタビュー

電気自動車
ある暮らし

【ユーザーインタビュー】電気自動車のある暮らし vol.3

安全で快適! 電気自動車で自動運転の「今」を体験

本当に安全に走れるの? どこまで自動なの? テスラに試乗しての自動運転ドキドキ初体験レポートです。

長距離をドライブするとき、「運転を車に任せられたらなぁ」と思ったことはありませんか。
「運転中は緊張しっぱなしで、家に帰ったらヘトヘト」
「運転に集中していると会話が楽しめない」
「コーヒーを飲むのもひと苦労」

そんなドライブ中の不満を解消してくれるのが自動運転機能。電気自動車は自動運転と相性がよく、機能は年々向上しているといいます。

「運転しなくていいのは嬉しいけれど、本当に安全に走れるの?」
と思うみなさんを代表して、今回はテスラでの自動運転にチャレンジ。
EVsmartを運営するアユダンテ株式会社の代表取締役、安川洋のレクチャーのもと、自動運転に関する疑問や不安にも迫ってみました。

聞き手:上島寿子
撮影:杉田賢治

自動運転って
どこまで自動なの?

ーー自動運転というと、私のなかではSFの世界。ドライバーのいない車が人を乗せて走るシーンがよく映画にも出てきますよね。

  • 安川

    イメージは近いですが、ちょっと違います。今の自動運転にはドライバーは必須ですね。

ーーでは、運転席に座って居眠りしたり、映画を観たりということは?

  • 安川

    そもそも自動運転は搭載される技術によって0〜5までのレベルに分けられているんですね。現在、日本国内で市販車に採用されているのはレベル2。車は自動的に走行できますが、ドライバーは常に運転を代わることのできる状態でスタンバイしていなければならないんです。

ーーうちの車にはクルーズコントロール機能がついているんですが、それは自動運転と同じですか?

  • 安川

    クルーズコントロールはアクセルやブレーキを操作しなくても車間と速度を保てる機能。この点は同じですが、自動運転の場合、車線を検知しながら前に進むのでカーブを曲がることができます。

ーーということは、ハンドル操作をしなくていい?

  • 安川

    そうです。ドライブ中にコーヒーを飲んだり、サンドイッチをつまんだりということが気楽にできるんですね。

ーーそれは嬉しいですね。

  • 安川

    あと、車線変更もできます。

ーー車線変更も!でも、どうやって?

  • 安川

    ウィンカーを上げればいいんです。左車線に入りたいなら、左にウィンカーを上げる、それだけです。

ーーもし左車線に車がいたら?

  • 安川

    大丈夫。ちゃんと入れるだけの車間距離があるかを見て作動しますから。無理な車線変更はしないんです。

自動運転の初体験をナビゲートする安川。自身もテスラを所有。

ーー自動運転ができる車ってどのくらいあるのですか?

  • 安川

    国産車、外国車ともに各社力を入れていますよ。システムはそれぞれちょっと違いますが、いずれも主流は画像とセンサーで読み込むタイプですね。

ーーそれを搭載している車って?

  • 安川

    システムでいうと、スバルの “アイサイト”とか、日産のプロパイロットとか。外国車ではテスラ、BMW、アウディ、メルセデスなどからも出ていますね。

ーーたくさんあるんですね。

  • 安川

    ガソリン車でも自動走行はできるんですが、相性がいいのは電気自動車だと思いますね。特にテスラの場合、システムのアップデートが常にされているので。

※テスラは、インターネットにつながっていて、毎月、システムのアップデートが行われています。

助手席に乗って
まずは自動運転を体感

ーー今日、試乗するのもテスラですよね?

  • 安川

    2019年に日本でリリースされたテスラのモデル3です。コンパクトで運転のしやすさも評判の車種です。ちなみに、テスラの自動運転機能は「オートパイロット」と呼ばれています。

ーー何を隠そう私、自動運転はもとより電気自動車に乗るのも初めてでして…。

  • 安川

    じゃあ、まずは助手席に座ってみますか? 運転はうちのニューフェイス、石井光春にさせますよ。

ーーぜひお願いします!

  • 安川

    これが今日、試乗するテスラです。

自動運転のお手本を見せるのは、「アユダンテ」エバンジェリストの石井。もちろん、電気自動車の大ファン。

ーーかっこいいですね。ちゃんと充電もされている。そのカードは?

  • 石井

    これはカードキーです。テスラの場合、ドアのロックと解除はカードキーを車のセンサーにかざすだけなんです。

ーーなんとカードで!

ドアのロックと解錠と車の起動はこのカードで。
  • 石井

    このカードキーは車の起動に使います。といっても、センターコンソールに置くだけですが。

ーー薄くて軽くて持ち歩くのに便利ですね。でも、逆に薄いから曲げたり、割ったりしないか心配です。

  • 石井

    自分のスマホに車の情報を登録すれば、カードキーがなくても操作できるんです。ユーザーはもっぱらスマホを活用しているそうですよ。

ーースマホで車が動くんですか!

  • 石井

    僕もいつもスマホで操作していますが、カードキーも財布に入れてあります。スマホの電池が切れたときのお守りのような感じですね。

スマホに登録すればカードは不要。
駐車場には充電の機械も完備されています。

ーーでは、まずは助手席に座って…。運転、よろしくお願いします!

  • 石井

    お任せください。では、出発しますね。

ーーあれ?自動運転にしないんですか?

  • 石井

    自動運転は高速道路のほうがすごさがわかりやすいので、あとで試しますね。

ーーそうなんですか。

  • 石井

    ただ、自動運転中でなくても画像とセンサーは作動していて、周辺の状況はここに表示されています。

ーー“ここ”って、この大きいスマホみたいな機械?おっ、周りの車とか、横断歩道を歩く人とか、ちゃんと映し出されている!

パネルの右側に車の周りの状況を表示。人もしっかり映っています。このパネル1つで運転モードの切り替え、室内の温度調整、回生ブレーキの量やバッテリー消費の閲覧などあらゆる操作できます。
  • 安川

    テスラの場合、画像を写すカメラがフロント3台、サイド各2台、バック1台と全部で8台も搭載されているんです。

ーー8台も!

  • 安川

    その画像は1秒間に20〜30枚というスピードでAIが解析して走行をコントロールする。

ーーAIが載っているんですか。

  • 安川

    加えて、12の超音波センサーが設置されていて、さらに160m先の動く物体まで感知する前方レーダーもついています。それらの情報が複合的に解析されているんですね。

ーー人間の目はたった2つ。前を見ていればどうしてもサイドには目が届きにくくなるし、後ろも見えるのは一部だし。

  • 安川

    ですよね。人間と違って、360度全方位を同時に監視できるのがすごいところなんです。

ーー監視能力はある意味、人間より上…..?

  • 安川

    そうですね。しかも、解析能力は常に向上していますし。

ーー解析能力が向上って?

  • 安川

    たとえば、そこに赤いコーンがありますよね。画像に写ったときに、それがコーンであると識別するためには解析能力を高めていく必要があるんです。

ーー免許を取るときに標識を覚えるのと同じですね。

  • 安川

    テスラの場合、道路情報は常にアップデートされて、かなり細かく認識できるようになっています。

コーンはコーンとしてしっかり表示されています。すごい。

ーーんっ?! 今、なにか「ピッ」という信号音が出ましたね。なんの音ですか?

  • 安川

    今のは緊急ブレーキを知らせる音です。歩道ぎわに信号待ちの自転車に乗った人がいましたよね? その画像から、前を横切る可能性があるとコンピュータが解析して、ブレーキをかけようとしたんです。

ーーそんなところまで見ているとは。恐るべし、8つの目!

なめらかな車のハンドルさばきに感心

ーー高速道路に入りましたね。そろそろ自動運転の出番ですか?

  • 安川

    そうですね。切り替えてみましょうか。

ーー・・・・・・・。あれ?切り替えました?

  • 石井

    はい、切り替えましたよ。

ーーえっ、いつ? 全然気づかなかったんですけど。

  • 安川

    テスラのオートパイロット機能の起動は、ハンドルの横にあるシフトレバーをコツコツと下へ2回押すだけなんです。

ーーそんなに簡単なんですか? 切り替えたかどうか、自分でも忘れちゃいそう。

  • 安川

    パネルに表示されているから大丈夫。ほら、オートパイロットのマークが青に変わりましたよね?

ーー確かに青い。それに車線も青になっていますね。

ハンドルの右側にあるシフトを2度下へ押すとオートパイロットに切り替えられます。
オートパイロット中はマークが青色になり、車線も青色に。中央には最高速度も表示されています。

ーーこの真ん中の円のなかの数字は?

  • 安川

    最高速度です。どんなに道が空いていても設定した以上のスピードはでないように設定できるんです。あと車間距離も7段階で設定できます。

ーー前の車との距離を設定できるということ?

  • 安川

    そうです。僕の場合、東名や名神などの高速道路では5、首都高は車が多いので普段は5、割り込まれやすいところでは2に設定しています。

ーー車間距離を設定しておけば、前の車に突っ込んだりはしない?

  • 安川

    前の車との距離が詰まったときには自動的に減速します。

ーー賢いですね。

  • 安川

    衝突防止にはレーダーも活躍しています。前車のその前まで監視しているので、たとえば2台前の車が急ブレーキをかけたときには、前の車のブレーキランプが点灯するより先に減速していることもあるんです。

ーー優秀なボディーガードたちに見守られて走っている感じですね。あっ、カーブですよ!大丈夫ですか?

  • 安川

    大丈夫。ちゃんと曲がれます。

ーー本当!曲がりましたね。しかも、とてもなめらか。

  • 石井

    車線変更も試してみましょうか。こうやってウィンカーをあげると…..。

ーーおお、車線を移れた!すごーい!

  • 安川

    隣の車線に十分な余裕があるどうかを確認しながら入るから衝突することはまずありません。

ーーそれにスムーズですね。おたおたしながら隣の車線に入り込む私の運転より、はるかに上手い!

  • 安川

    隣の車線に余裕がないときは、ウィンカーをあげても作動はしませんし、車線変更禁止のエリアでもやはり作動しないようになっているんです。

ーー車線変更禁止まで認識するんですか。どうやって?

  • 安川

    黄色いラインを読み込むからなんです。

ーー車線の色まで認識できるなんて!

  • 安川

    現状でいうと、唯一のウィークポイントは車線が白い点線のときにしか作動しないことですね。白い実線では車線をまたげない。ただ、これも道路情報のアップデートが進めば解決されるでしょう。

ーーまだまだ進化の途中なんですね。それにしても走行がスムーズでびっくりしました。これなら私も運転できる……じゃなくて、運転しないでいられそう。

  • 石井

    そろそろ運転変わりましょうか。

ーーは、はい。

いよいよ運転席へ
自動運転の快適度は?

ーー初の電気自動車、初の自動運転。緊張しますね(ドキドキ)。

  • 安川

    高速道路の流れにのったら、自動運転に切り替えてみましょう。自分のタイミングでいいですよ。

ーー右のレバーを2回、クリックでしたよね。(カチ、カチ)おっ、車線が青くなった。

  • 安川

    最高速度はハンドルにあるレバーで調整できますが、今のままでちょうどいいかな。

ーーアクセルから足を離していますが、ちゃんと速度が維持されていますね。あっ、前の車がブレーキをかけた!

  • 安川

    大丈夫、ちゃんと減速しますよ。

ーー本当だ。減速しましたね。ほっ……。あれ、なんか警告音が出てますけど。

  • 安川

    ハンドルから手が離れてるんですよ。

ーーえっ。自動運転だから手を離してもいいのでは?

  • 安川

    最初に説明したように、なにかあればすぐに対応できるよう基本的にハンドルに手をかけていなければいけないんです。

ーーええっ、そうなんですか。手離しはまったくダメ?

  • 安川

    この車では15秒以上手を離すと警告音が鳴ります。

ーー15秒。短いですね。

  • 安川

    そのあと50秒、つまり65秒以上手を離していると手動運転に切り替える仕組みを搭載することが日本では義務付けられているんです。

ーー安全第一というわけですね。

緊張しながら自動運転を体験中。
手を離すと警告音が鳴り、パネルの上部が青に。慌てて手を戻しました。

ーーあーーーーーーっ!

  • 安川

    ど、どうしました?

ーーカーブが来ます。ど、どうしよう。本当に曲がれるんですか?

  • 安川

    大丈夫。曲がれます。

ーーでも曲がれなかったら……(ハンドルを回す)

  • 安川

    ハンドルを回すとステアリング操舵だけが解除されてしまうから、それはやらないほうがいいです。もし、自動運転を解除するならブレーキを踏む。

ーーす、すみません。ブレーキで解除ですね。

  • 安川

    そう、解除はブレーキ。これを習慣にしましょう。

ーーはい、教官!!

  • 安川

    またカーブがきましたね。

ーー曲がれるでしょうか(ハラハラ)。

  • 安川

    結構、本気で曲がりますから大丈夫ですよ。

ーーおーー、曲がれた!

  • 安川

    左右に寄ったりもしなかったでしょ?

ーーはい、ちゃんと車線の中央をキープしていました。

  • 安川

    運転のブレがないのもテスラの特徴なんです。

ーー私はカーブのときにどうしても外側にふくらむクセがあって。私より運転が上手いような。

  • 安川

    車線変更も試してみましょう。右車線に入りましょう。

ーー右にウィンカーをだせばいいんですよね。おっ、右車線の車の状況を検知してますね。

  • 安川

    入れるかどうか確認しているんです。

ーーあ、入った!

  • 安川

    オートパイロットの運転、なかなか上手いでしょ?

ーーですね。車線変更するときってサイドミラー、バックミラー、目視と何度も確認するのが大変ですが、そのストレスからも解放されます。

  • 安川

    オートパイロットは車間を一定に保てるから、渋滞のときにも便利なんです。もちろん、長距離のドライブもラクになります。

ーー我が家は帰省のときにいつも車なので、この機能があればすごくありがたいですね。どのくらい自動運転で走れるものなんですか。

  • 安川

    道路状況次第ですが、僕は東名高速道路で東京から豊田インターまでオートパイロットで走破したことがありますよ。

ーーそんなに!

  • 安川

    運転を車に任せられるので、疲れ方がまるで違いました。

ーー羨ましいです。ちなみに、デメリットってありますか?

  • 安川

    強いて言えば、運転を楽しめないことですね。もっとも、運転を楽しみたい場所ではオフにすればいいだけのことなので、デメリットとはいえないでしょう。

ーー日本の自動運転はできないこともまだ多いと聞きましたが。

  • 安川

    赤信号や一時停止は認識できないですね。あと、ナビとは連動していないので、高速道路の分岐点などでは自分で経路を選ばなければなりません。右折や左折もできないですね。

ーー目的地さえ入れれば、あとは車にお任せというのは難しいんですね。

  • 安川

    ただ、アメリカでは目的地をいえば、ナビに経路に沿って車が勝手に走ってくれるシステムがリリースされています。あと、グーグルカレンダーと連動させておくと、ただ車に乗るだけで目的地に着けるシステムも搭載されています。

ーー「◯◯ホテルで会合」というスケジュールを入力しておけば、車を起動させるだけで自動的にそのホテルに行けるということ?

  • 安川

    それに近いですね。日本では自動的にナビをセットしてくれるだけですが、アメリカの場合、ナビと自動運転が連動しているので、ナビに沿って車が勝手に走ってくれるんです。

ーーすごーい!

  • 安川

    ただし、今のところ、それができるのは高速道路上だけ。信号、一時停止、右左折など認識できないものがある一般道ではナビに沿った走行はできないので、高速を下りたところでオートパイロットは自動的に解除されるようになっているんですよ。

ーーそうなんですね。すべて自動でできる日が早く来るといいなぁ。

※2020年5月25日現在、アメリカでは新しいバージョンで信号、一時停止、踏切の認識ができるようになっているようです。

車庫入れに活躍するさらなる自動機能

ーー今日の試乗、とても面白かったです。ありがとうございました。

  • 安川

    最後にもう1つ、テスラのスゴ技をお見せしましょう。

ーーえっ、スゴ技?もう駐車場に着いていますけど?

  • 安川

    車から降りてください。

ーー降りるって、降りたら車庫入れできませんよ?

  • 安川

    テスラには「サモン」と呼ばれる機能があって、ドライバーが車を降りてスマホで車を動かすことができるんです。

ーー車に乗らずに車を動かせる?!

  • 安川

    ちょっと動かしてみますね。

ーーわぁ、バックして車庫に入った!

  • 安川

    動かせるのは前後数メートルだけですが、狭い駐車場の車庫入れには便利なんです。

ーー運転席側のドアを開けたら壁や柱にゴツンッとか、狭すぎて助手席側から降りたことも何度かありますが、それがなくなる?

  • 安川

    そうなんです。サモンとは“呼び出す”という意味で、乗り込みやすい場所まで車が移動してきたり、駐車場まで移動して車庫入れしたりというのが本来の機能なんですよ。

ーーショッピングモールでたくさん買い物をしたとき、それができたら便利ですね。

  • 安川

    日本では法律上、ドライバーが乗らずに車を動かすことはできませんが、いつかできるようになるかもしれませんね。

ーー今日はありがとうございました。自動運転、楽しかったです!

走行後にさまざまなデータをチェック。これは電気の消費量。もちろん、走行の途中でも確認できます。
充電状況もわかりやすく表示。

まとめ

人が運転しなくても車が勝手に走って目的地に行けるーー。そんな未来のカーライフがすでに近くまで来つつあることを実感しました。これから精度が上がっていけば、ドライバーの年齢や運転技術を問わない時代がくるのかも。
もちろん、今の時点での自動運転も乗り心地抜群。運転上手の電気自動車を相棒にしたら、通勤も週末のドライブも快適で楽しくなりそうです。

LINEで送る
Pocket