【ユーザーインタビュー】電気自動車のある暮らし vol.5
自宅充電ができなくてもEVライフを楽しめる理由
充電設備のないマンションで充実のEVライフを満喫するリーフユーザーさんが登場!そのコツをたっぷりご紹介します。
電気自動車で気になるのは、充電をいつどこでするかということ。
一戸建てなら自宅に充電設備を取り付けて、外出先で足りなくなったらその都度、補充というパターンが想像できますが、充電設備のないマンションの場合はどうしているのでしょう。
そこで、神奈川県川崎市のマンションに暮らすEVユーザーのNさんを訪問。自宅充電ができなくても通勤からドライブ旅行までEVライフを満喫しているというその秘策を伺ってみました。 マンションに住む方は必見ですよ。
聞き手:上島寿子
撮影:杉田賢治
もくじ
車通勤のコスト削減のために
電気自動車の購入
Nさんの愛車は日産リーフなんですね。購入したのはいつ頃ですか?
-
Nさん
2019年3月です。
初めて買った車がリーフですか?
Nさん
24歳の時に最初に乗ったのは同じ日産のノートで、2年半で乗り換えました。
乗り換えたきっかけは?
Nさん
引っ越しですね。
えっ、引っ越し…ですか?
-
Nさん
職場が浦安なので、以前は同じ千葉県の船橋に住んで車通勤していたんです。ただ、僕はもともと神奈川県の鶴見で生まれ育って、両親は今も鶴見に住んでいる。そろそろ地元のほうに戻りたいなと思って、隣の川崎で分譲された今のマンションを買って引っ越すことにしたんです。
新居に引っ越したら、川崎から浦安まで通わないとならないわけですね。
-
Nさん
船橋に比べると距離は倍ぐらい長くなって、ガソリン代も跳ね上がってしまう。僕はプライベートでも車によく乗るんですが、船橋の頃は毎月2万円ぐらいに収まっていた。それが川崎に引っ越したらおそらく4万円ぐらいになるだろうなと。
毎月4万円だと、年間48万円!
-
Nさん
もったいないですよね。それで、よい策はないかと考えて行き着いたのが電気自動車への買い換えだったんです。今のマンションに引っ越す1ヵ月前に納車されました。
電気自動車にもいろいろありますが、リーフにした理由は?
-
Nさん
理由は2つあって、1つは価格ですね。リーフは電気自動車のなかでも比較的買いやすかった。とはいえ、決して安くはないんですが。
いくらだったか、訊いてもいいですか?
-
Nさん
僕が買ったのは40kWhバッテリー搭載の10万台記念モデルで、税金、手数料、メンテナンス費込みで450万円ぐらいでした。
マンションを買って、さらにリーフの450万円って奮発しましたね。
-
Nさん
勢いというか(笑) 会社の人には「その金額を出せば、レクサスの下のクラスが買える」って言われましたね。
リーフを買うときに補助金は利用しましたか?
-
Nさん
国の補助金を40万円ぐらい受けました。自治体によっては独自の補助金制度があるんですけど、神奈川県にはなくて。代わりというのか、江の島や箱根などにある県営の駐車場が半額になるんです。江の島はよく行くので、結構、活用しています。
リーフにしたもう1つの理由は?
-
Nさん
ランニングコストがかからないことですね。僕が買った当時は日産のユーザー向けサービス「ZESP2(※)」があって、毎月2000円の会費を払えば日産販売店舗と、NCS(日本充電サービス)が提供する高速道路やコンビニなどの急速充電が使い放題。これは魅力的でしたね。
(※)ZESP2は2019年12月に新規受付を終了。すでに加入している場合は、満期日(入会日から5年間)まで利用ができます。
ZESP2の利用を前提にリーフを選んだわけですね。
-
Nさん
月々の車のローンは4万円ぐらいなんですが、ガソリン代としてかかるはずの4万円がなくなるし、会社からは定期代分の交通費も支給されているのでペイできるかなと思いました。
自宅周辺と通勤ルートの
充電スタンドをフル活用
充電について伺いたいのですが、Nさんはマンション住まいなので自宅充電はできないですよね?
-
Nさん
できないですね。僕のマンションにはカーシェアリングサービスがあって、その車はリーフなんです。だから充電設備はついているんですけど…..。
でも、使えない?
-
Nさん
購入前、不動産会社の担当者からは「いずれは設備を拡充して、個人所有の電気自動車の充電にも使えるようにする」と言われたんですが、今のところ実現されていませんね。
ということは、外で充電するしかないわけですね。その費用はいくらぐらい?
-
Nさん
ZESP2の月会費2000円だけです。無料のところでしか充電しないので。
わざわざ充電しに行くのって不便じゃないですか?
-
Nさん
そうでもないですね。家の近くには無料の急速充電スタンドが結構あるので。普段よく利用しているのは「日産プリンス神奈川 川崎幸店」。店舗の駐車場に充電スタンドがあって、お客さんがいないときには「店内でお待ちになりませんか」とお茶まで出してもらったことがあります。
ディーラーの充電スタンドならではのサービスですね。
-
Nさん
もう1つ、よく行くのは「スーパー三和 鶴見尻手店」。ここはどの車も一律で無料な上に、充電器の容量も大きい。買い物がてら充電に行っています。ただ、無料だけに昼間は充電待ちの車で行列ができることも多いですね。
どのぐらいの間隔で充電していますか?
-
Nさん
通勤だけなら一度充電すれば2日間はもちますね。僕の勤務形態は4勤2休なんですが、休日はだいたい近所のスタンドに充電をしに行っています。遊びに行って充電する時間がなかったときは、そのまま出勤して帰りに東雲にある「オートバックス」の充電スタンドに寄って補充します。
充電がギリギリでハラハラ…なんてこともあったり?
-
Nさん
目的地までの距離と電池残量は常に頭に入れて運転しているので、充電が少なくて慌てるっていうことはないですね。僕が乗っているモデルは電気の消費量1%で3㎞は走れる。勤務先までは10%あれば着けるとわかっているので、残りが20%でも普通に乗って出かけちゃいます。
そして、帰りに充電するわけですね。
-
Nさん
急速充電なら残り10%でも30分つなげば50〜60%ぐらいまで回復しますから。
寄ろうと思っていた充電スタンドが混雑してかなり待ちそう、なんてときはどうしていますか?
-
Nさん
じゃあ、別のところで充電しようかってなりますね。
あ、そんなにあっさりした感じですか(笑)
-
Nさん
今はガソリンスタンドより充電スタンドのほうが多いので。たとえば、国道15号線で僕がよく使う区間だと、大森、平和島、蒲田、川崎、鶴見、新子安、東神奈川、横浜……。
頭に入っているんですね。すごい。
-
Nさん
充電スタンドはアプリで簡単に検索できますよ。僕はZESP2で使えるスタンドを中心に探すので、日産のアプリ「NissanConnect EV」をスマホに入れて使っています。全国の充電スタンドが網羅されているし、提携している充電スタンドの場合は、空いていれば“緑”、使用中なら“赤”とリアルタイムで表示されるからわかりやすくて便利なんです。
リーフユーザー必携のアプリですね。実は、「NissanConnect EV」のデータはこのサイトを運営しているEVsmartが提供しているんです。
-
Nさん
そうでしたか。
ちなみに、EVsmartのアプリでも充電スタンドの検索ができますが、使ったことはありますか?
-
Nさん
はい、もちろん。充電器に関する情報が集約されていて、充電器までの道のりもすぐ表示されてとても便利です。あと、ユーザーの口コミ情報も載っていて、知らない土地でも安心して充電器を探せます。
よかった(笑)
-
Nさん
ただ、先ほども言ったように、日産のアプリではCHAdeMOの充電スタンドが空いているかどうかマップ上で一目でわかりますし、自分の車のバッテリー残量などもアプリで見られるところも便利ですね。
車に乗らなくても、バッテリーの残量が把握できるということ?
-
Nさん
そうです。他に、ドライブ履歴もチェックできますし、エアコンのオンオフも遠隔操作できます。冬なら暖房を入れておくと、乗り込んだときに寒い思いをしないで済むんです。
それは嬉しいですね!
-
Nさん
あと、この日産のアプリでは自分の住む地域の電気料金を入力すると、充電に使った電気代も見られるんです。
あれ? Nさんの場合、すべて無料なのでは?
-
Nさん
自宅の充電設備で充電したらいくらぐらいになるのかなと思って、試しに入れてみているんです。今月は1万6,000円も得したなぁって(笑)
なるほど(笑)
-
Nさん
惜しいのは画面上に表示される車の色が赤しかないこと。自分の車の色には変えられないんです。
愛車の色ならもっと愛着が湧きそうですよね。ところで、一つ、気になっているのは充電のための待機時間。自宅充電なら家の駐車場に停めている間に充電ができますが、外で充電すると30分間、待たないとならないですよね。退屈じゃないですか?
-
Nさん
そうでもないですよ。スーパーの充電スタンドなら買い物が済ませられるし、東雲のオートバックスならカー用品を見たり、併設のスターバックスでコーヒーを飲んだり。あと、車の中でゲームしていることも多いかな。電気代やガソリン代が浮くと思えば苦じゃないです。
充電の時間が息抜きになるわけですね。
ドライビングを見直して
旅行中の充電回数を最小限に
Nさんは車で旅行にもよく行くとのことですが、どの辺りまで足を延ばすんですか?
-
Nさん
最近だと青森を中心に東北方面を旅行しました。5日間で走行距離は1,670㎞。
そんなに!充電場所に困ることはなかったですか?
-
Nさん
青森は奥入瀬や十和田湖などをまわりましたが、充電で困ることはなかったですね。地方はのほうが充実しているんじゃないかと思うぐらい。
全部、無料で使えました?
-
Nさん
もちろん、有料のところもあるので、そこは避けるようにしています。今回の旅行中も福島県の白河で充電しようと思ったら1回500円だったのでやめました。
徹底していますね(笑) ということは、旅行の交通費は高速代だけ?
-
Nさん
そうですね。青森に行った時はGo Toトラベルキャンペーンで宿泊とセットの高速周遊パスが売り出されていて、それを利用しました。福島の白河から先は実質7,500円で4日間、高速道路の乗り降りが自由にできる。福島までの高速代は片道4,500円だったので、トータル16,500円で済みました。彼女と2人で行ったので1人8,250円ですね。
安い!電気自動車で旅行するときのポイントってありますか?
-
Nさん
宿は基本的に充電設備があるところを選んでいますね。泊まる間に充電できたほうが便利なので。
充電設備のある宿は増えているみたいですよね。
-
Nさん
地方は市役所や町役場に無料の充電設備があることも多くて、それも狙い目ですね。軽井沢の町役場は無料で使えるし、奈良県は電気自動車を推進しているので公営の充電スタンドがたくさんありました。あと、高速道路でいうと、東名より新東名のほうが充電施設は充実していますね。
詳しいですね。そういう情報はどうやって入手しているのですか?
-
Nさん
さっきの日産のアプリのほかに、旅行のときは「高速充電なび」も活用しています。これもリアルタイムで空き状況がわかり、満車の場合は使用中の車が何時に充電を開始したかも表示されるので、「着く頃には終わっているな」という予測が立つ。目的の充電スタンドが近づいたらアラームで教えてくれる機能もあって便利ですね。
そんなに進化しているんですか。
-
Nさん
あと、僕はリーフユーザーの会にも登録していて、そこでの情報交換も役立っています。海が一望できるとか、緑がきれいといった景色も楽しめる充電スタンドの口コミ情報もあって、わざわざ寄ってみることもありますよ。
充電スタンドに立ち寄るのも旅の楽しみになっているんですね。
-
Nさん
旅行のときだけでなく、日産のグローバル本社にある最大出力90kWもある大型充電設備など話題の充電スタンドを巡ってみたり。僕のリーフは40kWなので、出力が高くても充電スピードはいつも変わらないんですけど(笑)
遠出をするときに、運転で気をつけていることはありますか。
-
Nさん
運転が荒くならないようにしています。さっき僕のリーフは1%3㎞で走ると言いましたが、高速でスピードを出すと、その分、電気の消費は激しくなるんですね。ガソリン車と一緒で、穏やかな運転のほうが燃費はいい。だから高速道路では、一定速度で走れるオートクルーズ機能をできるだけ使うようにしています。
安全な走行のためにも大切ですよね。
-
Nさん
法定速度を守ったほうが結果的に早く目的地に着けるというメリットもあります。電池の減りを抑えれば、充電回数を少なくできるので。
充電のためのタイムロスが減らせるわけですね。
-
Nさん
初めてリーフで大阪に行ったときは途中で4回充電しましたが、次に行ったときはスピードを抑えたので2回充電で済みました。30分×2回だから1時間の短縮ができて、ガソリン車と変わらない時間で目的地に着けたんです。
運転の仕方で所要時間も変わるなんて驚きです。
-
Nさん
それを学んだのは、リーフを買った年の夏。金沢を旅行したとき痛い目にあったんです。
痛い目って?
-
Nさん
旅行の最終日に能登半島をぐるぐるまわって、夕方、向こうを出て北陸自動車道にのったんですが、途中で充電ができなくなってしまったんです。
えっ、どういうことですか?
-
Nさん
急速充電をするとバッテリーは熱をもつんですが、その日は何度も充電をしていたので熱が蓄積されてしまったんです。しかも、真夏だから熱の放出もできない。テスラなどリーフ以外の電気自動車は独自の冷却システムを搭載しているんですが、リーフに限っては空冷式なのでバッテリーが熱をもちやすいんです。
ガソリン車でいうオーバーヒートの状態?
-
Nさん
オーバーヒートのように車が止まるわけではないんですが、通常なら30分間で40%充電できるところが半分程度しか入らない状態になったんです。リーフユーザーの間ではこれをレッドゾーンと呼んでいて、僕のリーフは富山あたりでレッドゾーンに入ってしまったわけです。
なんだか聞くだけでドキドキします。
-
Nさん
解決するにはバッテリーを冷やすしかない。80キロで走行すれば出力が抑えられるのでバッテリーを冷やせるんですが、充電するとまた熱をもってしまい、わずかしか充電できない状態は変わらない。
つまり、少し充電して走って、また充電して少し走っての繰り返し?
-
Nさん
そうなんです。結局、帰り道は倍以上の時間がかかってしまいました。
そこで荒い運転はよくないと悟ったわけですね。
居住性の高い電気自動車は
一度乗ったらやめらない!
電気自動車に乗り始めて1年半以上経ちますが、ランニングコスト以外に何かメリットは感じていますか?
-
Nさん
居住性の高さですね。走行中の音が静かなのはもちろん、停まっているときもガソリン車のようなアイドリング音がなくて快適です。停車中にエアコンを気兼ねなくかけられるも嬉しいですね。夏に青森に行ったときは手前の宮城で仮眠を取ったんですが、普通に6時間も寝てしまった。早朝に青森に着く予定だったのに(笑)
それだけ車内が快適っていうことですね。
-
Nさん
バッテリーが下に載るので重心が低く、走りが安定していますね。アクセルの反応もいい。スポーツモデルならもっと運転が楽しめるだろうなと思います。あと、回生ブレーキによってアクセルを離すだけで減速できるから、ブレーキをあまり踏まなくなりました。ブレーキパッドはほぼ減ってないと思います。
メンテナンス費も安く済みそうですね。
-
Nさん
口コミ情報をみるとZESP2にメンテナンス費が含まれているから、車検の際も税金や登録費ぐらいしかかからないみたいですね。
ただ、ZESP2には入会から5年間という期限がありますよね。
-
Nさん
僕の場合、ZESP2の期限は2024年2月末までなので、そこまで乗ったら今のリーフは手放そうかと思ってます。5年の残価設定型のローンで買ったこともあるので。
その後は考えていますか?
-
Nさん
また電気自動車に乗り換えることは間違いないですが、そうなると自宅に充電設備は欲しくなりますね。僕の場合、通勤とプライベートで月2000㎞は乗るから、後継のZESP3で月額1万円のプランに入ったとしても全然足りないんです。
月額1万円のプラン“プレミアム40”は、急速充電10分×40回まで無料ですが、月2000㎞も乗るとそれでも足りないんですね。
※ZEPS3のプラン概要
https://www.nissan.co.jp/EV/CHARGE_SUPPORT/ZESP3/
-
Nさん
だから、自宅充電ができるよう一戸建てへの引っ越しも考えているんです。
えっ、でも、マンションを買ったばかりでは?
-
Nさん
今のマンションは立地がいいので、新築時の価格より値上がりしているんです。それなら売ってもいいかなと。
家のリセールバリューも折り込み済みなんですね。
-
Nさん
親もマンション暮らしなので、この近辺に二世帯を建てれば生活のランニングコストも下げられますよね。
なるほど、いろいろ考えていらっしゃるんですね。では、最後に伺います。次に欲しい電気自動車はズバリ、どれ?
-
Nさん
旅行にも使えることが前提なので、ハイパワーで航続距離が長いテスラか、日産のアリア、リーフだったら“eプラス”が欲しいですね。そうすれば、少ない充電回数で遠方まで出かけられて、ますます車の旅が楽しくなりそうです。
まとめ
自宅に充電設備がないと充電に行く手間と時間がかかって大変そうと思っていましたが、家の周りや通勤ルートの充電スタンドを上手に使いこなせば問題はなし。むしろ充電スタンドを巡るのが楽しみになるというのも驚きの発見でした。地方の充電スタンド事情や運転の仕方で充電の回数が減らせることなども、ぜひ参考にしたいですね。