【ユーザーインタビュー】電気自動車のある暮らし vol.1
電気自動車の魅力ってなに?
乗り心地ばつぐんで雪道にも強いってホント?フル充電でどのくらい走れるの? プレ空調って何? そんな電気自動車の疑問にお答えします!
ある日曜の昼下がりのこと。
「ねぇパパ、お隣、電気自動車(EV)に買い替えたんだって。乗り心地がすごくいいみたいよ」
「でもさ、電気自動車って高いんじゃない?」
「ちょっと高かったみたいだけど、今はクリーンエネルギー自動車補助金もあるし、ガソリンを入れるより充電費用はおトクらしいの」
「あれ?あそこの家、家族でしょっちゅうキャンプに行ってなかったっけ?充電はどうしているんだろう?」
「そうよね。遠出したときに充電スタンドは見つかるのかしら?」
電気自動車という存在は知っていても、その車にどんな魅力があるのかを知らない人はまだまだ多いはず。そこで、電気自動車のことをもっと知り、その先に広がる暮らしをイメージしていただくのがこの連載です。
第1回目は電気自動車の基礎知識から。テスラに乗って5年、このEVsmartを運営するアユダンテ株式会社の代表取締役、安川洋のインタビューをお届けします。 電気自動車に興味がある人はもちろん、「電気自動車は未来の車」と思っている人も、一緒にその楽しい世界に触れてみましょう。
聞き手:上島寿子
もくじ
ガソリン車と電気自動車
なにが違うの?
ーーガソリンで走るのが従来の車なら、電気自動車は電気で走る車のこと。そのぐらいはわかるのですが、具体的にどこが違うのでしょうか。
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安川
そもそも従来の車はガソリンをエンジンで燃やし、そのときに発生するエネルギーを駆動力にしています。ディーゼル車も同じ。軽油を燃料にして動いているんですね。一方、電気自動車の場合は、この「燃やす」という工程がありません。だから、エンジンは搭載されてなくて、代わりに電気で動くモーターの力でタイヤを動かしているのです。ちなみに、電気自動車は「EV」とも呼ばれますが、これは「Electric Vehicle」の略なんですよ。
ーー同じ自動車という形をしていても、ガソリン車と電気自動車では駆動のシステムが根本から違うんですね。電気自動車とよく似たものにハイブリッド車がありますが、その違いは?
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安川
ハイブリッド車はガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターの両方を動力源として備えた自動車を指しています。走行の仕組みはいろいろありますが、速度が低い時は電気で動くモーターを使い、燃費の効率が良い速度になった時には、エンジンに切り替えて走行をする方式が多いですね。
ーーガソリン・ディーゼル車、ハイブリッド車、電気自動車。それらの選択肢から、なぜ安川さんは電気自動車を選んだのですか?
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安川
電気自動車はひと言でいえば、とても快適で楽しい乗り物。従来の車にはないメリットがたくさんあるんですよ。
ーーそれ、ぜひ知りたいです!
EVsmartユーザー619人に聞きました
Q.電気自動車(プラグインハイブリッドも含む)に乗る頻度は?
A.半数近くが毎日利用という結果に!
電気自動車の乗り心地は
リビング並み?!
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安川
まず快適性という点でいうと、違うのは静音性ですね。ガソリン車でドライブしていて、一緒に乗っている人の話が聞きとりにくいという経験はないですか?
ーーあります、あります。だから大きな声で話さなければならなくて、目的地に着くと喉がカラカラ…..。
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安川
従来の車は、ガソリンをエンジンで燃焼させるため大きな音が発生します。遮音部品を使っても完全に遮音することは難しく、高級車であっても多少の音が出てしまうんですね。
ーーエンジンを載せている以上、音はやむなしというわけですね。
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安川
それに対して、電気自動車は電気でモーターを動かすだけなので騒音がほとんど出ません。数値で比べると電気自動車の音はガソリン車の半分程度。とても静かなので、運転席と後部座席に座っている人の間でも、リビングにいるぐらいの感覚で話ができるんです。
ーーじゃあ、走りながら音楽やラジオを聴くときも音量を上げなくていいんですね。
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安川
その通りです。しかも、従来の車のようにエンジンを動かすための振動も電気自動車にはないので、その点でも静かなんです。特に、信号待ちなどで停車中の静けさは圧倒的。アイドリングがないからなんです。あまりに静かすぎて歩行者が車に気づかないことが多いため、最新の電気自動車にはあえて音を出す装置をつけることが義務づけられているんです。
ーー乗り心地もやはりいいんですか?
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安川
すごくいいですね。ポイントは2つあって、1つは加速性能の良さ。アクセルを踏むと、すーっと滑らかに加速されるのが電気自動車の特徴なんです。もう1つのポイントは地面の凸凹を拾いにくいという点。地面の状況を検知して、それに合わせて走り方を調整する機能があるので、スムーズに吸い付くように走れるんです。
ーーそれなら気持ちよくドライブできそう!
安全性にも違いがあった!
ーーそういえば、電気自動車は雪道に強いと聞いたことがありますが、それは本当ですか?
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安川
雪道で怖いのはスリップですよね。一度滑り出すと制御が効かなくなってしまう。その点、電気自動車は「なんでこんなに滑らないの?」と思うほど滑りにくいんです。
ーーどうしてですか?
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安川
理由は制御の早さ。ガソリン車の油圧式ブレーキは操作してからタイヤに伝わるまでに0.1秒かかると言われています。対して、電気自動車のタイムラグは0.001秒。100倍の早さです。それはタイヤが滑るとセンサーが検知し、すぐにモーターの出力にフィードバックされるからなんですね。もちろん、雪道だけでなく雨の日も安定した走行ができますよ。
ーー運転歴数十年でも雨の日の運転はドキドキしますが、滑りに強い車なら安心して走れますね。
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安川
安心感といえばもう1つ、電気自動車は事故による衝撃にも強いと言われています。
ーーそうなんですか?ガソリン車のほうが頑丈そうなイメージがありました。なんとなく……ですが。
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安川
電気自動車の場合、電気を供給するためのバッテリー(蓄電池)が必要になりますが、どこにあると思いますか?
ーーガソリンタンクと同じように車体の後ろ……?
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安川
残念ながら不正解。バッテリーがあるのは車体の下。鉄やアルミで覆われた大きな板状のバッテリーが車の一番下にあり、それがシャーシ(車の枠組み)を兼ねているんです。このバッテリーは分厚く頑丈なので、特に側面をぶつけられたときに強い。ボディの強さに定評があるボルボとの比較した実験でも、電気自動車のほうが強いことが実証されているんです。
ーーえーっ、意外です!
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安川
しかも、バッテリーは非常に重く、テスラの場合は450〜600kgぐらい。だから、風にあおられて横転する危険性も低いんです。それにガソリンを載せていないので、大きな事故のときも一気に燃えたり、爆発したりということがないんです。
ーーそのバッテリーについては、停電の際の非常用電源になると聞きましたが。
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安川
使えますね。たとえば、日産リーフの場合、フル充電されていれば、一般的な家庭の6日分の電気をまかなえると言われています。ただし、バッテリーを家庭用電気に使えるかどうか車種によりますし、家庭に供給用の設備が整っていることも必須ですが。
ーー台風や地震などで停電になったときには心強いですね。
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安川
それに、災害時にガソリンスタンドが休業状態になっても、家に電気が通っていれば充電できるのが電気自動車の強み。ライフラインのなかで、電気は比較的復旧が早いと言われていますから。
EVsmartユーザー619人に聞きました
Q.地震・風水害などの際に、電気自動車が役だったことは?
- 電気自動車の蓄電を利用して携帯の充電ができ、テレビの情報も得られた。
- 東日本大震災の時に、近所のガソリンスタンドはどこも数百メートルの行列ができていたけれど、電気自動車なので自宅で充電ができた。
- 夜中に台風で停電した時にPHEVが満充電だったので、PHEVの中でエアコンをつけて睡眠を取ることができた。
- 実際に活躍したことはないが、電気の備えが安心感につながっている。
- 熊本地震の際、ボランティアとして現地に行ったが、充電スタンドは比較的早くに復旧していたので移動などがスムーズだった。
夏も冬も乗ったときから快適!
ーー快適に乗れてしかも安心で万が一のときに役に立つ。電気自動車のメリットはたくさんあるんですね。
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安川
ほかにも、電気自動車にはプレ空調という機能があるので、乗車する前にエアコンを入れておくことができるんです。
ーー夏に車に乗り込むとオーブンの中で焼かれているような気分になりますが、あの灼熱地獄が解消できるんですね。
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安川
そうなんです。一方、冬は乗った瞬間から暖かい。厳寒の時季はフロントガラスに霜や氷が張ることがよくありますが、ガソリン車の場合、お湯をかけたり、デフロスターをかけて溶けるまでまったりと大変じゃないですか?
ーーそうそう、前が見えないからなかなか出発できない。
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安川
その点、電気自動車なら15分ほどプレ空調をかければ霜も氷もきれいに落ちています。すぐに出発できるんですよ。
ーーすごい!画期的ですね!
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安川
さらに挙げるなら、地球環境に優しいというのも大きなメリットですね。エンジンを搭載した車は、燃料を燃やした際に二酸化炭素を排出します。二酸化炭素は地球温暖化の原因と言われ、排出量を減らす取り組みが世界的に行われていることはご存知ですよね?一方、電気自動車は走行時の二酸化炭素排出量はゼロ。排気ガスに含まれる大気汚染物質も抑えることができるんです。
ーーつまり、未来につながる車ということですね。
気になる航続距離や充電などの今
ーーところで、電気自動車に関して、いくつか気になっていることがあるのですが。1つは電磁波の問題。電気自動車は体によくないと聞いたのですが、本当ですか?
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安川
電気で動く車なので、確かに電磁波は出ています。でも、その数値は電車と同じレベル。電磁波がこわいから電車に乗らないという人は避けたほうがいいと思いますが、普段、電車を利用している人は気にする必要はないんじゃないかな。
ーーなるほど、安心しました。もう1つ心配なのは航続距離についてです。フル充電でどのくらい走れるのでしょうか。
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安川
正直なところ、電気自動車の航続距離はガソリン車ほど長くありません。ガソリン車の場合、満タンにすれば500km以上走行できるのに対し、一般的な電気自動車はせいぜい200km-500kmほど。遠出をする場合、高速道路に乗ってから2時間ほどで充電の心配が出てきます。しかも、冬の寒い時期はバッテリーの減りも早く、航続距離はさらに短くなってしまうんですね。
ーー東京から大阪に行くまでには1〜2回は充電しないとならないですね。
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安川
ただ、航続距離は以前よりも伸びていて、テスラの「モデルS ロングレンジ」は航続595kmを達成しました。また、日本の電気自動車の代表格である日産リーフは、新型になると364kmまで走れます。今後は各メーカーとも伸びていくはずですよ。
ーーその充電については、1回にどのくらいの時間がかかるのかが気になります。
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安川
そもそも充電方法には普通充電と急速充電の2種類があるんですね。普通充電はゆっくり時間をかけて充電する方法です。例えば、200Vの充電設備を使って航続距離160km分の充電をするのには約7時間かかります。
ーーええ、そんなに!
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安川
でも、自宅に充電設備を取り付ければ、寝ている間に充電ができますよね。ショッピングモールのような長時間滞在する場所なら、買い物をしている間にある程度まで充電できますよ。旅先なら宿泊する施設に借りて、一晩つなげば朝にはフル充電になっていますし。
ーー急いで充電したい場合はどうしたらいいのでしょうか。
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安川
その場合は、急速充電を使うといいですね。航続距離160km分の充電をするのにかかる時間は15〜30分ほど。サービスエリアでトイレ休憩や食事をする間に充電できるので不便はないはずですよ。
ーーそもそも充電できるスポット自体、少ないという話もよく耳にしますが。
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安川
そんなことはありません。充電スタンドはかつてに比べて格段に増えていて、現在は普通充電器は1万3596か所、急速充電器は7578か所、合計1万8611か所の充電スタンドがあるんです。これに対して、全国のガソリンスタンドは約3万2000か所ですし、自宅でも充電できますから、実はさほど変わらないんです。
ーー考えていたよりかなり多いですね。でも、どうやって探せばいいんでしょうか?
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安川
充電スタンドを探すときに役立つのが、私たちが運営する「EVsmart」なんです。スマホからでも全国の充電スタンドを簡単に検索できるので、旅先でも困りません。もちろん、充電スタンドがなさそうな場所に行くときは、あらかじめ充電を済ませておくことが肝心。でも、それってガソリンの給油も同じですよね。
ーー「EVsmart」なら今いる場所の近くの充電スタンドもすぐにわかるんですね。それなら安心。電気自動車に乗ってみたくなりました!
EVsmartユーザー350人に聞きました
Q.自宅以外の充電スタンドは利用する?
A.約8割の方が充電スタンドを利用しています。
まとめ
電気自動車の魅力は、快適な乗り心地、滑らかで安心な走り、環境への優しさなどとても多彩。航続距離はかつてよりグンと延びて、充電スタンドも拡充されつつあります。通勤から買い物、休日のドライブまで、まさに足代わりとして気軽に乗りこなせるのが昨今の電気自動車なのです。「乗ってみたいな」と思った方のために、次回は気になる価格や維持費についてご紹介します。